農業経営は、これまで家族経営が主体でしたが、昨今は、家族以外の方を雇用するケースが増えています。しかし、労働条件が不明瞭であったり、労務環境が悪いと、離職者が多かったり、労務トラブルが起きたりと、様々なお困りごとに繋がります。

持続可能な組織として発展する農業経営を行うためには、適切な労務管理を行い、働きやすい労務環境づくりに向けた取り組みが必要です。

当事務所では、以下の「STEP1 農業労働の特徴と法定ルールの理解」「STEP2 農業分野で働く人の整理」「STEP3 労働条件の整理」について、わかりやすくご説明しながら、農業経営者の方々の労務環境づくりをサポートしております。

農業労働の特徴と法定ルールの理解

農業労働には、以下のような特徴があります。労働条件の設定や就業規則の作成等の社内ルール作りの際には、このような特徴を考慮し、柔軟な設計を行う必要があります。

  • 季節性があり、作業適期がある。作業が集中し分散しにくい。
  • 移動性が高く、屋外労働が多い。自然条件に左右されること、未整備な環境での作業も多い。
  • 作物や家畜の成長段階により多様な作業があり画一的でない。

また、このような農業労働の特徴から、労働基準法において、一部が適用除外とされています。適用除外とされているのは、主に「労働時間、休憩、休日」であるため、深夜労働以外の割増賃金の支払が不要とされています。その一方で年次有給休暇や深夜労働に対する割増賃金のルールは適用されています。

このように、農業分野については、他産業と比べ一部だけ柔軟な運用を可能とされているのですが、大半は他産業と同じ法定ルールが適用されています。
この点を適切に理解していないと、「農業だから特別。残業代は不要」「個人経営だから、そこまでしなくてもよい」といった誤解を抱いたまま人を雇用してしまいます。

STEP
1

農業分野で働く人の整理

当事務所は、特に集落営農の法人化、農家の法人化について、これまで多くのご相談に対応して参りました。その経験を踏まえ、農業分野の労務管理の第一歩としていつもご提案することは、「働く人の整理」です。

農業分野で働く人は、他産業に比べ多様と言えます。一見して、単純に使用者・労働者と区分することが難しい場合が多く見られます。
例えば、集落営農組織の構成員とそのご家族、農事組合法人の組合員、農業研修生、農業経営者の親族、酪農ヘルパー、ボラバイトなど、様々な呼称や立場で働く人がいらっしゃいます。

このような方々について、実態を把握し、雇用関係があるのか無いのかを精査した上で、働く条件や社内ルール作りに取り組むことが大切です。

STEP
2

農業現場に適した労働条件の設計

STEP1、2が済んだら、従業員に明瞭に明示できるように、労働条件を整理しましょう。この段階で農業経営者の方々が最初に考えるのは、賃金をいくらにするかという点です。賃金の額は、労働条件の中で最も重要な要素であり、そうお考えになるのはもっともですが、ぜひ、並行して労働時間の設計にも着目して下さい。

農業分野には、季節性があり、作業適期があること、自然条件に左右されるといった特徴があります。このため、他産業に比べ、労働時間の予定を立てにくく、農業経営者の中にはご自身が何時間働いているのかを意識されていないことが多いです。「農閑期は何となく作業時間が少ないけれど休日はない」「家畜がいるので年中無休」といったご状況もよくお聞きし、雇用する従業員の労働時間を想定できていないことが多いです。
しかし、果たしてこのような状況で、従業員の雇用ができるでしょうか。特に正社員の雇用は難しいと言わざるを得ません。

長期的に安心して働ける職場として選ばれるためには、「従業員が働く時間がどれだけで、その時間に対しいくらを支払うのか」という当たり前のことを伝えることができなければなりません。

特に季節性のある作物を栽培される方の場合、難しいとお感じになることが多いですが、安心して下さい。

先ほど述べたように、農業分野は労働基準法の規定を一部適用除外とされているので、御社の農閑期・農繁期に応じた労働時間の設計を行うことができます。

1日、1か月(又はシーズン)、年間の単位を意識した労働時間の条件設計を行い、その上で、他産業に比べ遜色のない賃金設定を行いましょう。労働時間・賃金ともに御社の農業現場に合う労働条件設計を当事務所がお手伝いをさせて頂きます。

STEP
3

労務管理に関するご相談例

  • 家族以外の人を初めて雇用する。何をすればいいのか?
  • 法人化することになった。何を変えればいいのか?
  • 賃金はどうやって決めればいいのか?
  • 農閑期と農繁期で働く時間がバラバラ。労働条件通知書の書き方がわからない。
  • 就業規則を作成したい。農業の現場に合う労働条件はどう決めればいい?